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<園長だより「風」6月号> |
道 |
2023年5月25日 |
東海道、中山道、日光街道……、江戸時代、各地を結ぶ多くの街道が整備され、たくさんの人が行き交い、人々のつながりが深まりました。近代になると全国に国道が張り巡らされ、今では高速道路網が整備されて遠い所まで短時間で移動できるようになりました。さらに町の中には、県道・市道・そして小さな路地に至るまで人々の生活に欠かせない道が存在しています。昔も今も道は人々の営みの中で重要な役割を担っています。
「道」という字は、十字路と立ち止まる足とが元になってできた「しんにょう」に「首」が組み合わさってできています。古代の人々は、多くの人が行き交う道を通って異民族の邪霊(じゃれい)などが入り込むのではないかと恐れていました。その災いを避けるために異族の首を手に持ち、その呪(のろ)いの力で邪霊を祓(はら)い清めようとしたのが「道」という文字の起源といわれています。単純に人々が通るだけではなく、道を通って種々雑多なものが移動するという認識からこの文字ができているようです。
フランスの詩人ジャン・ド・ラ・フォンテーヌは「すべての道はローマに通ず」という格言を残しました。古代ローマ時代、ヨーロッパ各地から異なる道を通ったとしても必ずローマに到達することができたということから、出発点や手段は違っていても目的が同じなら同じ場所や結論に達すること、あるいは、あらゆる物事は一つの真理から発していることのたとえとして用いられます。また、日本では「茶の湯」「剣術」「柔術」などでも、その技や精神を極めることを通して高みに至ることをめざし「茶道」「剣道」「柔道」という「道」が生まれました。このように「道」ということばは、人々が通る場所を示すだけではなく、人々の精神世界にまで入り込んでいます。
「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」
高村光太郎(1883~1956)の「道程」という詩の一節です。自らの進む道は自分の力で切り拓いていく、その歩みが「人生」という一本の道となるのだという思いを表現しているとのこと。自分の人生は他の誰でもない、自らの力で歩んで行こうという気概(きがい)を示した詩になっています。
「道」は聖書の中にも記されています。
「主はこう言われる。『さまざまな道に立って、眺めよ。昔からの道に問いかけてみよ。 どれが、幸いに至る道か、と。その道を歩み、魂に安らぎを得よ。』」(エレミヤ書6章16)
多くの道がある中で、自分はどのような道を歩いているのか、その道は正しい道なのかを振り返ってみようと呼びかけられています。
さらにイエスさまは
「わたしは道であり、真理であり、命である。だれでもわたしによらないでは、父のみもとに行くことはできない。」(ヨハネ福音書14章6)
と、イエスさまの道を歩むようにと教えてくださいました。そのイエスさまの道は、「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい。」(ヨハネ福音書13章34)という教えに集約されています。
みなさんが歩んできた跡にはどのような道ができているのでしょう。その道はローマ(真理)に真っすぐに向かっている道でしょうか。それともあちらこちらに寄り道しつつ、ローマへと向かっているのでしょうか。時には迷路に迷い込んでいる時もあったかもしれませんね。でも安心してください。すべての道はローマにつながっています。少々回り道をしても、目標を失わなければ必ずローマに至ることができます。また、これから作り出していく「僕の前に」できる道が向かう先にある目標(ローマ)は、しっかりと見えているでしょうか。
ちょっと立ち止まって、みなさんが歩んできた道、そして、これから歩もうとする道について考えみると、何か新たな気づきがあるのではないでしょうか。
(園長 鬼木 昌之)
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<園長だより「風」 5月号> |
世界を広げる本とのふれあい |
2023年4月25日 |
年少さんは「赤バッジ」年中さんは「桃バッジ」年長さんは「青バッジ」。天使幼稚園では学年ごとにバッジの色が決まっています。学年が上がり桃バッジや青バッジをつけた子どもたちは、誇らしげに新しいバッジを見せてくれます。「わたし、あおバッジさんだから、あかバッジさんのおせわができるの。」と報告してくれることも。子どもたちにとって、バッジの色は、自分の成長を感じることができるツールになっています。
年少さんや年中さんの頃、なかなか新しい友だちの中に入っていくことができていなかった子が、年長さんになると、小さな子に気を留めてお世話をする姿がみられるようになったり、年中さんの頃まで我慢をすることがあまり得意でなかった子が、「それはだめでしょう。」と声をかけると、すっとやめることができるようになったりと、本人はあまり意識していなくても大きく成長している様子が見られるようになります。
3歳から4歳、4歳から5歳、そして5歳から6歳になる1年間の成長は、29歳から30歳になる大人と比べると比較にならないほど大きなものです。人生の1/6年と1/30年、数字を見てもその差は歴然としていますね。体も脳も著しく成長している子どもたちにとっての1年間はとっても大きなものです。
その一方、まだまだ経験が少ない子どもたちですから、環境を整えずに過ごさせていると、身の回りのわずかな情報しか受け取ることができず、大きく成長するきっかけを失ってしまいます。子どもたちの可能性を伸ばすためには、子どもの周りの環境を整えることが大切です。
今年の春、慶應義塾大学法学部に入学したことが話題になった芦田愛菜さんは「両親は、私が小さい時からすごく身近に本を置いてくれていました。そういう環境を作ってくれたことに感謝してます。本が好きになったのは、いつもたくさん読み聞かせしてくれていたことが大きいと思います」「小さい頃から両親がたくさん本を選んできてくれたので、読書はすごく身近な存在でした。歯磨きとか、お風呂とかと同じような感じ」と語っていました。芦田さんは自身の経験の中で、読書が自分を大きく育ててくれる礎になったと伝えてくれています。
本や絵本の中にはいろいろな世界が詰まっています。また、人として大切にしなくてはいけない教えを伝えてくれるものもあります。小さい頃の本・絵本との出会いは、その子の世界を大きく広げてくれるものです。
「うちの子はあまり本を読みたがらなくて……。」という声も時々聞くことがあります。そこで役に立つのが「読み聞かせ」です。なかなか本を読みたがらない子、絵本を手にしようとしない子も、お家の方とふれあうのは嬉しい時間です。子どもとのスキンシップを図りながら読み聞かせをすることを通して、子どもに本との出会いの場を提供することも一つの方法です。また、恐竜の本やキャラクターが載っている本しか見ないなど、読む本や絵本が偏っている子どもにも読み聞かせが役に立ちます。お子さんが好きな本を読みつつ、合わせてその子があまり関心を示さない本を1冊はさむことを通して、その子の体験の幅を増やしてあげることができるのです。子どもの欲求に沿いつつ、意図的に必要なものを組み込んで子どもの成長を導いていく、それが子育てや教育活動のポイントでもあります。
ご自身の著書「まなの本棚」の中で、芦田愛菜さんは「小さい時に目にしていたものも少し成長してから読み返してみると、全然印象が変わっている―――。小さな子供向けと思われる絵本も、大きくなってから読み返すと『あれ、こういうことだったんだ!』って、以前は見落としていた教訓やキーワードに気づくことも多いんです。」と記しています。善い本や絵本には、子どもだけではなく大人にとっても大切なメッセージが込められているもの。お子さんと一緒に、ぜひ多くの本や絵本とふれあい、世界を広げていってみてください。
(園長 鬼木 昌之)
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<園長だより「風」 4月号> |
援け合い・学び合い |
2023年4月7日 |
4月(April:卯月=うづき)を迎えました。月の名前のエイプリル(April)は、ギリシャ神話の愛と美の女神である「アフロディテ(Aphrodite)」から来ているという説と、気候も暖かくなり草木が芽吹く季節であるため、ラテン語の「開く」を意味する「アペリレ(aperire)」から来ているという説があります。和名の卯月という呼び方は、旧暦の4月(今の暦では5月頃にあたります)には、卯の花(ウツギ=アジサイ科ウツギ属の落葉低木で5月頃小さな白い花をつける)が咲くから、あるいは稲を植える月である「植月」からという説があるそうです。どちらの呼び方にも、日に日に暖かさが増し、草木が生い茂る季節に向かっていくという意味が込められています。
新年度を迎え、フランソワ・エンジェルクラスそして幼稚園で新しい生活が始まる子どもたちや、1年進級してお兄さんお姉さんになったという自覚をもって年中さんや年長さんになった子どもたちも、これから草木が芽吹きすくすく育っていくように、多くの体験を積みながら、ぐんぐん成長する日が訪れようとしています。
昨年度は「発見する喜び・成長する喜び」を目標に掲げ、一人ひとりの子どもたちが主体的に学ぶことができるような場を設定してきました。子どもたちは新しい体験をすると「おや?」「なんだろう?」「どうなっているのかな?」「どうすればいいのかな?」という疑問を持ち、それを解決する方法を見出したり、分かったり、出来たりすることを通して、喜びを感じ成長していくものです。昨年度はその環境を設けることを意識しつつ保育に取り組んできました。
今年度は、この目標を継続しつつ、さらに子どもたち同士の交わりの中で、互いに高め合っていくことができるように「援け合い・学び合い」を目標に掲げました。
国際化や情報技術の発達、さらには気候変動などで激しく変化していくことが予想されるこれからの時代を生きていく子どもたちには、多くの知識を持つこと以上に、その知識を用いて問題を解決する力が求められています。また地球を取り巻く様々な課題を解決するためには、一人だけの力ではなく、仲間と援け合い、力を合わせることが大切になっていきます。
4月の初めに、この目標を達成できるようにするために、どのように取り組んでいこうかと先生たちの話し合いを行いました。
〇 多くの経験を積む場を設けてあげたい(絵の具・粘土・折り紙・音楽・リトミック……)
〇 自由選択の場を増やしてはどうか(遊びや制作の内容・1日の時間の使い方を含めて)
〇 外部の方に来ていただいて、体験の場を増やしてはどうか(ゲストティーチャー)
〇 モンテッソーリのおしごとの提供をもっと増やして多くの中から選べるようにしてはどうか
〇 自分で目標を持って取り組む場を作ってはどうか(例:地図のおしごと・鉄棒 など)
〇 制作の中で、クラスや学年での共同制作を増やしてはどうか
〇 ルールのある遊びを教え、ルールに沿って遊ぶ楽しさを体験させたい
〇 ボールを使って一人で遊ぶのではなく、一つのボールを使ってみんなで遊ぶことの楽しさを味わわせてあげたい
〇 どんぐりや木の葉などを、一人で集めるだけではなく、みんなで共有して何かを作るような活動をしてはどうか
〇 みんなで作物や花などを育てる活動を取り入れてはどうか
等、たくさんのアイディアが出てきています。天使幼稚園創立75周年を終え、新しい伝統を作っていくためにも、積極的にいろいろな活動にチャレンジしていきたいと考えています。
さらなる成長を目指す天使幼稚園。今年度も、どうぞよろしくお願いいたします。
(園長 鬼木 昌之)
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